山が好き。バロック音楽が好き。手仕事は鉄工から楽器作りとなり、今、いくつもの流れが一つになって、美しいチェンバロが生まれる。
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| チェンバロ工房 穂高クラヴィーア |

穂高町山麓から泉郷へ登る坂道、そこから林に分け入った中にチェンバロ工房「穂高クラヴィーア」がたたずんでいます。
吉岡弘司さんは小さい頃からピアノやバイオリンに親しんできましたが、若い頃にはビートルズ、高石友也や岡林信康などの反戦フォークなど熱中しました。やがてラジオ番組で出合ったバロック音楽に強く惹かれていきます。その中で一番魅せられたのがチェンバロでした。
当時FMの「朝のバロック」や「バロック音楽の楽しみ」「バロック音楽をあなたに」をエアチェックした方も多かったと思います。
古楽器に惹かれたのは最初にバロックバイオリンを聞いたとき、これがバロックの音なのか!と驚いたのがきっかけです。なかなかチェンバロを見ることもできないでいましたが、あるとき趣味でチェンバロを作っている方に出会い、自分でも作ってみたいと思うようになったのです。 |

クラヴィコード
理工学部の学生時代、3年間でほぼ単位を取得してしまったので、1年間北アルプス槍沢小屋で働き、そのお金を持ってヨーロッパに渡りました。とにかく生で音が聞きたかった。おめあては、まだ訪れる日本人も少なかったニューイヤーコンサートでした。
大学卒業後、地元大阪で家業の鉄工所を継いでいましたが、やはり楽器作りの夢捨てがたく、やり直すならいまのうちと、昭和64年、35歳のときに安曇野穂高に自宅と工房を建てました。
鉄工所はまず松本に移し、ほかにできる人が少ない「ボタン工具」を作る仕事を、4年をかけて責任を持って他に引き継ぎ、穂高でのチェンバロづくりにシフトしていきました。
「とにかく学生の頃から『僕は信州に行くんだから』と言っていたんですよ。」と奥さんの恵子さん。
「もともとの信州との出会いは小学生のとき父親に上高地につれていかれたことかな。
高校のときも一人で山に登っていたし。」
「大阪にいたときは、まとまった時間ができると山に行っていましたよ。帰ってくるといい顔していました。」と恵子さん。
槍沢小屋に入ったときも、皆が槍ヶ岳山荘に上がりたがるのに・・・と言われたとか。でも泊まり客が少なくて静かだし、周りの山に登りやすくて、山小屋生活を堪能できたそうです。 |

実際に工房に入り、初めて本物のチェンバロに出会い、触らせていただきました。
チェンバロとピアノ、どちらも同じ鍵盤を持ち、外見も似ています。ピアノが「弦を叩いて音を出す」のと異なり、チェンバロは弦をはじいて音を出すのです。
鍵盤のキーを叩くとジャックが跳ね上がり、その爪が弦を下から上に「チーン」とはじきます。爪が戻るときに微かにこすれる音がします。フェルトが弦の振動を止め、キレの良い音になるのです。チェンバロの場合、ツメが弦をはじくときの感覚が指にどのように伝わるかも演奏表現上とても重要なのだそうです。
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チェンバロとスピネット
チェンバロは15世紀ごろに生まれ、18世紀末に消えていきました。その後ピアノが広まっていき、しばらくはほとんど使われていなかった楽器です。それが19世紀末に、バロックの曲はモダンの楽器(ピアノ)ではなくバッハの時代の楽器で演奏しようという動きがでてきて再び作られるようになりました。
チェンバロとピアノがひとくくりになっているのは誤解で、チェンバロのよさはピアノには出せないし、もちろん、ピアノのよさはチェンバロにはだせないのです。
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スピネット
工房には精密な図面とともに、製作中のスピネット もありました。これもチェンバロの一種の小型の1段鍵盤の楽器で音色も微妙に異なるそうです。
吉岡さんは鍵盤や弦もすべて自分で作っています。金属の加工もできるので、弦も焼きなましをしたりしています。鉄工所をやっていたことも、今の仕事に生きているのです。
弦の振動がブリッジを介して1.6mm厚の響板に伝わり、振動となって音が増幅されます。チェンバロのケースはピアノよりはずっと薄い木材でできていて、響板もジャックも木製です。本体は漆塗り、響板には穂高在住の内海柳子さん、冴子さんにより華やかな装飾画が描かれています。蓋の内側にラテン語のモットー(格言)が書かれています。「音楽は悲しみの薬、喜びの友」。
黒鍵は黒檀を貼り、白鍵は牛骨ではなく、旧いピアノから再生した象牙を貼っています。黒鍵と白鍵の色がなぜ逆なのかは、18世紀フランスで「演奏する王侯貴族の女性の手が白く見えるようにナチュラル・キーを黒くした」という一説もあるそうです。ナチュラル・キーの下側は円形の文様がくりぬかれ(アーケード)、ここに各作家がサインのように意匠を施すのだそうです。
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ヴァージナル
演奏会では舞台にチェンバロを何台もならべて、作曲家に合わせて変えたりします。
素晴らしく贅沢ですよね。また、和音の使い方に合わせてそれが綺麗に響くように調律をかえたりします。
「これからの目標ですか?いい演奏者に出会いたいですね。
楽器の構造から全て知り尽くしていないと演奏できない。
楽器のよさ、バロックのよさを表現してくれる人と出会いたいな。」と吉岡さん。
「楽器を作り始めて、いきいきしてくれて嬉しい
これからもどんどん眠っているものを出していって欲しいです。」と恵子さん。
病をのりこえ、自分の信じた道をゆく吉岡さん。純粋な美しい音はお二人の心から響いてくるのだと思いました。
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チェンバロ工房 穂高クラヴィーア (楽器・工房)
吉岡弘司
営業時間 不定
定休日 不定
〒399-8305 長野県安曇野市穂高牧2228-19
TEL 0263-83-4199
FAX 0263-83-4193 |
作品の販売 有 (譜面台、その他小物もあり)
(見学には事前の予約が必要です) |
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